2025年 | プレスリリース?研究成果
原始地球を模擬した実験でRNAを構築する一連の化学反応を実現 :ホウ酸と脱水リン酸が豊富な海岸で原始RNAが誕生か
【本学研究者情報】
〇理学研究科地学専攻 准教授 古川善博
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【発表のポイント】
- 最初の生命ではRNAがDNAとタンパク質の役割を果たしていたという説が支持を得ていますが、原始地球でどのようにRNAが生成したのかは大きな謎となっています。
- RNAの構成要素であるリボースと核酸塩基を、ホウ酸(注1)、リン酸化合物(注2)、火山ガラスの存在下で反応させることで、RNAを構築する一連の反応が実現できることを明らかにしました。
- この結果は、原始地球のホウ酸と脱水リン酸(注3)が豊富な海岸で、最初の生命を駆動したRNAが生成可能であったことを示しています。
【概要】
RNAはDNAを基にタンパク質を作り出す際に遺伝情報を伝える分子ですが、最初の生命ではDNAとタンパク質の両方の役割を果たし生命誕生に不可欠な分子であったと考えられています。しかし、RNAの材料分子からRNAを構築する化学反応がどこでどのように起こったのかは明らかになっていませんでした。
東北大学大学院理学研究科の平川祐太大学院生(研究当時、現?海洋研究開発機構ポストドクトラル研究員)、米国応用分子財団のSteven A. Benner博士、東北大学大学院理学研究科の古川善博 准教授らは、RNAの構成要素であるリボースと核酸塩基をホウ酸、アミドリン酸、火山ガラスの存在下で反応させると、リボースリン酸(注4)、リボヌクレオチド(注5)を経てオリゴヌクレオチド(注6)が生成する反応が効率よく進行することを明らかにしました(図1)。この結果は、RNAへの化学進化につながる一連の反応はホウ酸が豊富な蒸発環境で進行したことを示唆するもので、生命誕生に不可欠とされるRNA生成の謎を解く糸口となる可能性があります。
本成果は、日本時間2025年12月16日(火)午前5時公開の科学誌米国アカデミー紀要に掲載されました。
図1.本研究で明らかにしたRNAを構築する化学反応経路
【用語解説】
注1. ホウ酸
ホウ素の酸化物で陸上の温泉水などに多く含まれる。リボースと複合体を形成して安定性を向上させる効果が知られる。
注2. リン酸化合物
この研究では、アンモニアとリン酸が結合したジアミノリン酸をさしている。火山の噴気などに含まれる脱水リン酸とアンモニアが反応して生成される。
注3. 脱水リン酸(トリメタリン酸)
リン酸が加熱によって脱水し、3分子が環状に結合した分子。
注4. リボースリン酸
リボースとリン酸が結合した分子。ヌクレオチドの直接の前駆体となる。
注5. リボヌクレオチド
RNAの構成単位で、リボースにリン酸と核酸塩基が結合した構造を持つ。
注6. オリゴヌクレオチド
ヌクレオチドが複数個繋がった分子で、より長く繋がるとRNAとなる。
【論文情報】
タイトル:Interstep compatibility of a model for the prebiotic synthesis of RNA with Hadean natural history
著者:Yuta Hirakawa*, Hyo-Joong Kim, Yoshihiro Furukawa, Clay Abraham, Tzu-Wei Peng, Elisa Biondi, Steven A. Benner*
*責任著者 海洋研究開発機構 ポストドクトラル研究員 平川祐太
応用分子財団Distinguished Fellow, Steven A. Benner
掲載誌: Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
DOI:10.1073/pnas.2516418122
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科地学専攻
准教授 古川 善博(ふるかわ よしひろ)
TEL:022-795-3453
Email:furukawa*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)