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コケ植物における共生シグナル物質の空間的制御 ― ストリゴラクトンの生合成と分泌 ―

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 教授 経塚淳子
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 植物とアーバスキュラー菌根菌(AM菌)(注1)との共生は、植物の養分吸収に重要です。ストリゴラクトンは土壌で植物とAM菌との共生を仲立ちするシグナル物質です。
  • フタバネゼニゴケが、栄養(リン)が不足すると土に面した組織でストリゴラクトンを合成し分泌することを明らかにしました。また、AM菌と共生する組織でもストリゴラクトンの合成が促進されることを発見しました。
  • コケ植物は、約4億5千万年前に起こった植物の陸上進出後に最初に分岐した系統です。本発見は、ストリゴラクトンが植物とAM菌の共生を支えるシグナル物質であったという植物の陸上進出に伴う適応戦略を理解する鍵となります。

【概要】

アーバスキュラー菌根菌(AM菌)は、陸上植物の約8割と共生し、リンや窒素などの必須栄養素の土壌からの吸収を助けています。この共生関係は、陸上植物で広く見られるため、陸上植物の共通祖先で確立され、植物の陸上進出とその後の繁栄に大きく貢献したと考えられています。ストリゴラクトンは、AM菌との共生に必須の物質ですが、植物のどの部分で作られ、どこから土壌へ分泌されるかはほとんどわかっていませんでした。

東北大学大学院生命科学研究科の依田彬義特任研究員、経塚淳子教授らの研究グループは、コケ植物のフタバネゼニゴケを用いてストリゴラクトンが生合成され、分泌される部位を1細胞レベルで明らかにしました。本研究は、植物が陸上進出した際の適応戦略を理解する鍵となります。

本成果は2025年10月30日にPlant and Cell Physiologyに掲載されました。

図1. フタバネゼニゴケの葉状体
葉状体の土壌側には仮根と呼ばれる根に似た組織が生えており、アーバスキュラー菌根菌は仮根から侵入します。

【用語解説】

注1. アーバスキュラー菌根菌(AM菌)
植物の根に共生する糸状菌で、土壌からリンなどの無機栄養を植物に提供する一方で、植物から糖分を受け取るという共生関係を築く。フタバネゼニゴケには根がないため、仮根から菌糸を侵入させ、葉状体に共生する。

【論文情報】

タイトル:Spatial Localization of Strigolactone Biosynthesis and Secretion in Marchantia paleacea
著者: Akiyoshi Yoda, Kyoichi Kodama, Masaki Shimamura, Junko Kyozuka*
*責任著者:東北大学大学院生命科学研究科 教授 経塚 淳子
掲載誌:Plant and Cell Physiology
DOI:10.1093/pcp/pcaf144

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 経塚 淳子
TEL:022-217-6226
Email: junko.kyozuka.e4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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