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ステンレス鋼表面に発生する微小な腐食の出発点を見つける技術を開発 ─高耐食性の金属材料開発への貢献に期待─

【本学研究者情報】

大学院工学研究科 知能デバイス材料学専攻
助教 西本 昌史
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【発表のポイント】

  • ステンレス鋼(注1の腐食により発生する孔食(注2の大きさを従来比1/100の直径500 nm程度に抑制して作製できる新技術を開発しました。
  • 微弱な電流を印加しながら電位(注3の変化を検出し、孔食発生の瞬間に電流を遮断することで、腐食起点の溶解と消失の進行を止められます。
  • これによりサブミクロン(注4サイズの腐食起点を詳細に観察?解析できるようになりました。また、この技術はステンレス鋼以外の金属材料にも適用できるため、既存の金属材料の耐食性向上や新規高耐食合金の開発に大きく貢献すると期待されます。

【概要】

ステンレス鋼は高い耐食性を有していますが、海水などの塩化物水溶液にさらされるなどの環境下では、表面の一部に腐食が発生することがあります。耐食性を向上させるためには、腐食の発生起点を正確に特定することが不可欠ですが、従来の手法では、腐食が進行すると起点部分が完全に溶解してしまい、どこで腐食が始まったのかを突き止めることが困難であるという課題がありました。

東北大学大学院工学研究科の西本昌史助教、氏原幸太大学院生、武藤泉教授は、ステンレス鋼表面に存在するサブミクロンの腐食の起点を特定できる手法を開発しました。ステンレス鋼に微弱な電流を流し、腐食発生の確認後に速やかに電流を遮断することで、直径500 nm程度の非常に小さな孔状の侵食を腐食起点の部分に発生させることに成功しました。金属が溶解するサイズを非常に小さく留めることが可能となり、腐食起点を特定することができます。今回開発した手法は、ステンレス鋼だけでなく、さまざまな金属材料にも適用することができ、高い耐食性を有する新合金の開発につながることが期待されます。

本成果は、2025年4月11日(現地時間)に腐食科学に関する学術誌Corrosion Scienceのオンライン版で公開されました。

図1. (a)一般的な耐孔食性の評価試験と、それによりステンレス鋼の表面に発生した孔食の光学顕微鏡写真。(b)本研究で開発した手法と、それにより形成した孔食の走査型電子顕微鏡写真。(a)と(b)の孔食の写真は、撮影倍率が約2桁異なる。

【用語解説】

注1. ステンレス鋼:鉄(Fe)に約11%以上のクロム(Cr)を添加して耐食性を高めた鋼。成分と製造方法によって特性が異なるオーステナイト系、析出硬化系、フェライト系、マルテンサイト系などがあり、それぞれ異なる用途で使われている。

注2. 孔食:塩化物イオン(Cl?)などの侵食性化学種の作用により、金属表面に局部的な電池ができ、電気化学反応で孔状の小さな腐食が生じる現象。

注3. 電位:金属などの物質の帯電状態をあらわすパラメータであり、プラスに帯電しているほど高い値となる。

注4. サブミクロン:マイクロメートル(?m)の10分の1程度。

【論文情報】

タイトル:Microelectrochemical identification of the submicron-sized initiation site for pitting corrosion in 17-4PH stainless steel
著者:Kota Ujihara*1, Masashi Nishimoto*2, Izumi Muto
*責任著者:*1東北大学大学院工学研究科 大学院生 氏原 幸太
*2東北大学大学院工学研究科 助教 西本 昌史
掲載誌:Corrosion Science
DOI:10.1016/j.corsci.2025.112939

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
助教 西本 昌史
TEL: 022-795-7299
Email: masashi.nishimoto.b8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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