2025年 | プレスリリース?研究成果
植物のケイ素利用にかかる制約の解明に迫る 葉の脆さがケイ素利用のデメリット?
【本学研究者情報】
〇大学院生命科学研究科 特任研究員 梶野浩史
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【発表のポイント】
- イネをはじめとする一部の植物はケイ素を葉の支持に用いますが、多くの植物の葉はケイ素をほとんど含みません。しかし、ケイ素を利用する植物としない植物の両方が存在する理由はこれまで不明でした。
- 様々な樹木の葉のケイ素濃度と力学特性を評価したところ、ケイ素は葉の硬さには貢献するが強度には貢献しないこと、ケイ素濃度の高い葉はより小さな変形で壊れる(つまり脆い)ことがわかりました。
- ケイ素が葉を脆くすることを発見した本研究は、ほとんどの植物が葉の支持にケイ素を利用しない理由の解明につながると期待されます。
【概要】
ガラスの主要成分であるケイ素は、植物の葉を支える細胞壁を構成するための、炭素の安価な代用品として機能すると考えられてきました。しかし、実際にケイ素を根から吸収?利用するのはイネ科の草本をはじめとする一部の種だけであり、多くの種は根でケイ素を排除して体内に取り入れないようにします。したがって、ケイ素の利用にはメリットだけでなくデメリットもあると考えられます。
東北大学大学院生命科学研究科の梶野浩史特任研究員は京都大学大学院農学研究科の小野田雄介教授、北島薫教授との共同研究で、落葉広葉樹33種の葉の力学特性と化学特性を比較し、「ケイ素濃度の高い葉は硬いが脆い」という新たな仮説を検証しました。葉の脆さがケイ素利用のデメリットになることを示唆した本研究は、植物の葉のケイ素濃度の多様性を理解するための手がかりになると期待されます。
本成果は2025年4月10日に植物学に関する専門誌New Phytologistにオンライン掲載されました。

図2. 葉の組織密度で標準化した力学特性(力学特性を組織密度で回帰した際の残差)と、ケイ素濃度とセルロースの濃度関係。ケイ素もセルロースも硬さに正に寄与し(a, b)、最大ひずみに負に寄与する(e, f)。強度にはセルロースが正に寄与するが(d)ケイ素は寄与しない(c)。
【論文情報】
タイトル:Across 33 broad-leaved deciduous woody species, silicon enhances leaf lamina stiffness but not tensile strength whereas cellulose enhances both
著者:Hirofumi Kajino1,2* , Yusuke Onoda1 and Kaoru Kitajima1
*責任著者:東北大学大学院生命科学研究科 特任研究員 梶野浩史
掲載誌:New Phytologist
DOI:10.1111/nph.70079
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
特任研究員 梶野浩史
TEL: 022-795-7732
Email: hirofumi.kajino.d8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)