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電子機器内の熱流を自在に制御できるメカニズムを発見 -次世代デバイスの性能向上と省エネ化に期待 -

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 応用物理学専攻
教授 小野 円佳
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 絶縁膜の熱の流れを自在に制御できるメカニズムを発見しました。
  • 膜構造や振動特性が基板によって変化し、熱の伝わり方が劇的に変化することを実証しました。
  • 次世代の半導体デバイスや電子機器の放熱?省エネ技術に革新をもたらすと期待されます。

【概要】

電子機器に組み込まれた半導体デバイスの中で、電子や磁気(スピン)は設計した回路に沿って移動させることができます。しかし発生してしまう熱を思った方向に流して逃がすことは困難です。電子機器の性能を高めるには、半導体デバイスの発熱を適切にコントロールすることが不可欠です。

東北大学大学院工学研究科の小野円佳教授ら、北海道大学電子科学研究所、同大大学院工学研究院、高輝度光科学研究センターからなる共同研究チームは、絶縁膜であるアモルファスシリカ(SiO2(注1薄膜の熱の流れを自在に制御できるメカニズムを解明しました。具体的には、SiO2薄膜が下地となる基板と相互作用することで、膜内部の構造や振動特性が変化し、熱の伝わり方をコントロールできることを発見しました。SiO2の中には、Si-O結合がつながってできるリング状の構造があります。このリングのサイズや振動のしやすさが基板の種類によって変わり、それにより熱の流れが大きく変化することを実験的に証明しました。

本成果は次世代の電子機器の高性能化や省エネ技術につながる画期的な発見です。本技術を活用すればより効率的な放熱設計が可能になり、半導体デバイスの性能向上に貢献できます。

本研究成果は、4月14日16時(日本時間)に米国化学会科学誌Nano Lettersに掲載されました。

図1. (上)バルク(塊状の材料)のシリカガラスのX線全散乱プロファイル。透過配置のX線全散乱法と反射配置の微小角入射X線全散乱法のいずれを用いても波数1.51 ?-1の位置にハローピークが観測された。このピークはSi-O結合がつながってできるリング状の構造のサイズに相当する。(下)シリカ膜をSiやGaAs基板上に成膜した時のアモルファスシリカの微小角入射X線全散乱プロファイル(反射配置)で測定したもの。図中の数値はシリカ膜の厚みを示す。Si基板上に成膜した320 nm(プラズマCVDで成膜)のシリカ膜のピークはバルクと大きく変わらないが、50 nmALDで成膜)やGaAs基板上のシリカ膜(ALDで20 nmを成膜)のハローピークは高波数側にシフトした。Si基板のみのX線散乱プロファイルは比較のために載せている。

【用語解説】

注1. アモルファスシリカ薄膜(SiO2
ケイ素(Si)と酸素(O)からなる二酸化ケイ素の非晶質(アモルファス)構造を持つ薄膜を指します。結晶構造を持たないため、原子配列に長距離の規則性はなく、ガラス状の構造を示します。電気を通しにくく、絶縁破壊電圧が高いことから、シリコン基板上の絶縁層として半導体デバイスに広く用いられています。

【論文情報】

タイトル:Controlling thermal conductivity of amorphous SiOx films through structural engineering utilizing the single crystal substrate surfaces
著者:Katelyn A. Kirchner, Sohei Ogasawara, Melbert Jeem, Hiromichi Ohta, Akihiro Suzuki, Hiroo Tajiri, Tomoyuki Koganezawa, Loku Singgappulige Rosantha Kumara, Junji Nishii, John C. Mauro, Yasutaka Matsuo & Madoka Ono*
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻 教授 小野 円佳
掲載誌:Nano Letters
DOI:10.1021/acs.nanolett.5c00646

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 教授 小野円佳
TEL: 022-795-7952 Email: madoka.ono.d7*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室 担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898 Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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