2025年 | プレスリリース?研究成果
隠れた端子位置を電気伝導測定から特定する技術を開発 ─ ナノデバイスから地質調査にまで適用できる数学的原理を導出 ─
【本学研究者情報】
〇国際放射光イノベーション?スマート研究センター スピン計測スマートラボ
准教授 湯川 龍
センターウェブサイト
【発表のポイント】
- シート上に置かれた多端子(注1)の位置を電気信号から決定する手法を開発しました。
- 基準端子の数や配置など、どのような情報があれば多端子全ての位置を特定できるかを理論的に明らかにし、その結果の実証実験に成功しました。
- 宇宙を模した極低温?真空中など、カメラを設置しづらい過酷な環境でも端子位置の決定が可能となるほか、装置の大幅な小型化?低コスト化に寄与し、ナノシート開発に応用されることが期待されます。
【概要】
原子数層のナノシートでは従来の結晶とは異なる多彩な電子特性が見いだされ、正確な電気伝導測定への期待が高まっています。少なくとも4本以上の電気信号線で構成される多端子を用いることで正確な電気伝導測定を行えます。しかし、極低温や真空などでは電気伝導測定用の多端子の位置を確認することが難しく、高額で大型な装置を用いる必要があるという課題がありました。
大阪大学 大学院情報科学研究科の庵智幸助教(現在?宇宙航空研究開発機構 追跡ネットワーク技術センター研究開発員)と東北大学国際放射光イノベーション?スマート研究センター(SRIS)の湯川龍准教授は、シート上に置かれた多端子からの電気信号から各端子の正確な位置を特定する新しい手法を開発し、数学的証明と実証に成功しました。本手法により、測定装置の小型化や環境に依存しない計測が可能となり、ナノシートの開発や地質調査など多様な分野への応用が期待されます。
本成果は2025年3月25日に学術誌Physical Review Appliedに掲載されました。

図1. 伝導シート上に置かれた多端子の模式図。任意の4本の組み合わせから電流-電圧測定を行うことで基準端子に対する各端子位置を決定することができる。端子位置決定には電気信号を用いるため、端子が上方から隠れていても良い。そのため、装置の大幅な簡略化や小型化が可能になると期待される。
【用語解説】
注1. 多端子: 本研究では試料に接触させ電気伝導測定を行うための端子で4本以上のものを多端子としています。
【論文情報】
タイトル:Probe position determination with multichannel I-V measurements in a two-dimensional sheet: Computational method and mathematical analysis
著者:庵 智幸*、湯川 龍*
*責任著者:
大阪大学大学院情報科学研究科情報数理学専攻計画数理学講座 助教 庵智幸(現 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 追跡ネットワーク技術センター 研究開発員)
東北大学 国際放射光イノベーション?スマート研究センター(SRIS) 准教授 湯川 龍
掲載誌:Physical Review Applied
DOI: 10.1103/PhysRevApplied.23.034064
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学
国際放射光イノベーション?スマート研究センター(SRIS)
准教授 湯川 龍
Email: r.yukawa*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学国際放射光イノベーション?スマート研究センター(SRIS)
総務係
TEL: 022-752-2331
Email: sris-soumu*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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