2025年 | プレスリリース?研究成果
インド洋大津波から20年「より良い復興(Build Back Better)」は実現したか? 避難リスク低減状況の定量的評価で戦略的改善の必要性が判明
【本学研究者情報】
〇災害科学国際研究所 国際防災戦略研究分野
教授 村尾修
研究所ウェブサイト
【発表のポイント】
- 2004年インド洋大津波で被災したインドネシアのバンダ?アチェ市の20年間の都市復興が津波避難リスクにどのような影響を与えたかを定量的に評価しました。
- 津波リスクが最も高い地域の人口は4分の3に減少し、リスクのない地域への人口の移動が確認されました。
- 都市復興の中で施された津波避難ビルの整備により、津波が発生した場合の避難完了率は全体として大幅に改善され、避難時間も30分以上短縮される効果が確認されました。
- しかし、一部施設には収容限界を大きく超える避難者が集中することになり、施設配置の見直しが今後の課題として浮き彫りになりました。
【概要】
2004年のインド洋大津波から20年が経過したインドネシア?スマトラ島アチェ州州都バンダ?アチェ市では、津波避難ビルなどの整備が進められてきましたが、都市の復興とともに人口分布や避難能力にも変化が生じています。
東北大学災害科学国際研究所の村尾修教授らは、20年間の人口変動と津波避難施設の整備状況を踏まえ、津波避難リスクがどの程度軽減されたのかを評価しました。人口データと地理情報を用いて分析した結果、リスクの高い海岸部から安全な地域へと人口が一定程度移動しているものの、依然として市民の約29%が高リスク地域に居住していることが分かりました。さらに、避難シナリオに基づくシミュレーションから、津波避難ビルが避難完了率を大幅に改善する一方で、施設の容量や配置に課題が残されていることも明らかになりました。本研究は、復興によって仙台防災枠組で提唱されている「より良い復興(Build Back Better)(注1)」がバンダ?アチェでどの程度達成されたのかを定量的に評価した取り組みとして、今後の津波防災対策に示唆を与えるものです。
本研究成果は2025年3月20日に学術誌International Disaster Risk Reductionに掲載されました。

図1.津波リスクのゾーニング:沿岸部のR3から内陸部のR0にかけてリスクは小さくなっている(R3:津波リスク高、R2:津波リスク中、R1:津波リスク低、R0:津波リスクなし)。
【用語解説】
注1. より良い復興(Build Back Better):2015年3月に仙台市で開催された第3回国連防災世界会議において2030年までの国際的な防災指針である「仙台防災枠組2015-2030」が採択された。「より良い復興(Build Back Better)」はその指針の中に盛り込まれた災害後復興の基本的な考え方である。
【論文情報】
タイトル:Tsunami evacuation risk change associated with urban recovery in Banda Aceh after 2004 Aceh tsunami
著者:Osamu Murao, Mizuki Sato, Kazuya Sugiyasu, Hiroyuki Miura, Mufidatun Khoiriyah, Ryo Saito, Muzailin Affan
*責任著者:東北大学災害科学国際研究所 教授 村尾修
掲載誌:International Journal of Disaster Risk Reduction
DOI: 10.1016/j.ijdrr.2025.105400
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学災害科学国際研究所 国際防災戦略研究分野
教授 村尾修
TEL: 022-752-2125
Email: osamu.murao.a6*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学災害科学国際研究所 広報室
TEL: 022-752-2049
Email: irides-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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