2025年 | プレスリリース?研究成果
菌類による枯死木の腐朽タイプからドイツトウヒの将来的な分布縮小を予測
【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 深澤遊 准教授
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- ドイツトウヒはヨーロッパに広く分布する針葉樹で、倒木上に芽生え(実生)が成長します。菌類による倒木の腐朽タイプは、実生の定着に影響します。
- ヨーロッパ6カ国の森林を調査し、ドイツトウヒ実生の定着に適した腐朽タイプの倒木が北欧や南欧にくらべ中欧に多く分布していることがわかりました。
- 倒木の腐朽タイプの分布は、温暖化によるドイツトウヒの分布域の北上速度を遅らせるとともに南欧の分布域の縮小を促進し、将来的にこの樹種の分布の縮小を招く可能性があります。
【概要】
ドイツトウヒはユーラシア大陸西部の森林に広く優占する針葉樹であり、木材としての需要も高いことから生態的?産業的に重要な樹種です。
東北大学農学研究科の深澤遊准教授が代表を務める国際共同研究グループは、ノルウェーからギリシャに至る6カ国の森林を調査し、ドイツトウヒの種子が芽生えて成長するのに適した状態に腐朽した倒木の分布が中欧に偏っていることを発見しました。さらに、降水量の季節変化がドイツトウヒ倒木の腐朽タイプの地理的な分布に影響していることがわかりました。
このことは、ドイツトウヒに適した気候帯が温暖化によって全体的に北上したとしても、そこには芽生えに適した倒木がないというミスマッチが起こる可能性を示唆しています。南欧の分布域も温暖化により縮小すると予想されており、将来的なドイツトウヒの分布域の縮小が予想されます。
本研究成果は2025年4月7日(月)に生物地理学の国際誌Journal of Biogeographyで公開されました。

図1. 本研究の調査地(A)、各調査地における白色腐朽?褐色腐朽の発生頻度(%)(B)、実生密度(本/m2)。図AとBでも縦軸は地図の緯度にほぼ一致させてある。
【論文情報】
タイトル:" Geographical gradient of fungal decay type in Norway spruce logs in Europe and its impact on seedling establishment"
著者:Yu Fukasawa, Olga Orman, Václav Pouska, Radek Ba?e, Momchil Panayotov, Nickolay Tsvetanov, Lucie Zíbarová, Jenni Nordén, Yuki Kawasaki, Martin Mikolá?, Elias Polemis, Kamil Král, Tomá? P?ívětiv?, Miroslav Svoboda
雑誌名:Journal of Biogeography
DOI:10.1111/jbi.15135
問い合わせ先
(研究に関すること)
深澤 遊(フカサワ ユウ)
東北大学大学院農学研究科 准教授
TEL: 0229-84-7397
E-mail: yu.fukasawa.d3*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学農学研究科
附属複合生態フィールド教育研究センター
総務係
TEL: 0229-84-6711
E-mail: far-syom*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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