2025年 | プレスリリース?研究成果
安価な顔料で高速?高効率?高耐久なCO?→CO変換を実現 温室効果ガスの削減と有効活用に繋がることを期待
【本学研究者情報】
〇材料科学高等研究所 教授 藪浩
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 安価な顔料の一種であるコバルトフタロシアニン(CoPc)を用いて世界最高レベルの二酸化炭素(CO2)から一酸化炭素(CO)への変換効率を達成しました。
- 高電流密度(>1A/cm2)での高速電解が可能で140時間以上の耐久性を確認しました。
- 電極上で顔料を「直接結晶化」させ、プロセス時間の短縮と触媒性能向上の両立が可能となりました。
【概要】
近年、気候変動対策として温室効果のあるCO2を回収し、COなどの有用な炭化水素化合物に変換する技術が注目されています。
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の刘騰義(Liu Tengyi)特任助教、藪浩教授(主任研究者、同研究所水素科学GXオープンイノベーションセンター副センター長)、ジャン ディ(Di Zhang)助教、李昊(Hao Li)教授(主任研究者)らの研究グループは、金属錯体で安価な顔料の一種であるコバルトフタロシアニン(CoPc)をガス拡散電極上に直接結晶化させることにより、省プロセスでCO2電解用の電極を作製する手法と、1 A/cm2以上の高速電解条件かつ90%以上効率で合成燃料の原料となるCOをCO2から得る手法を確立し、併せて140時間以上の耐久性も実現しました(図1)。
本研究で開発したCO2電解技術は、安価な顔料触媒を用いて低コストかつ高効率にCO2から合成燃料の中間体であるCOを合成できるプロセス開発につながり、次世代のCO2有効活用(CO2 Capture and Utilization:CCU)技術として課題解決への貢献が期待されます。
本成果は、現地時間の4月4日に科学誌Advanced Scienceのオンライン速報版に掲載されました。
なお本成果は、東北大学大学院環境科学研究科の轟直人准教授、東北大学国際放射光イノベーション?スマート研究センター(SRIS)の小野新平教授、吉田純也准教授、北海道大学電子科学研究所の松尾保孝教授、およびAZUL Energy株式会社(仙台市、伊藤晃寿社長)らのグループとの共同研究によるものです。

図1. 金属フタロシアニン結晶修飾ガス拡散電極作製方法とコバルトフタロシアニン(CoPc)結晶を用いた場合の特徴と性能。
【論文情報】
タイトル:Surface Charge Transfer Enhanced Cobalt-Phthalocyanine Crystals for Efficient CO2-to-CO Electroreduction with Large Current Density Exceeding 1000 mA cm-2
著者:Tengyi Liu*, Di Zhang*, Yutaro Hirai, Koju Ito, Kosuke Ishibashi, Naoto Todoroki, Yasutaka Matsuo, Jun Yoshida, Shimpei Ono, Hao Li*, Hiroshi Yabu*
*責任著者:東北大学 材料科学高等研究所 教授 藪 浩
東北大学 材料科学高等研究所 教授 Hao Li
東北大学 材料科学高等研究所 特任助教 Tengyi Liu
東北大学 材料科学高等研究所 助教 Di Zhang
掲載誌:Advanced Science
DOI:10.1002/advs.202501459
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
教授 藪 浩(やぶ ひろし)
TEL: 022-217-5996
Email: hiroshi.yabu.d5*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
広報戦略室
TEL: 022-217-6146
Email: aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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