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野球における投球時の指先のすべりを初めて定量化! ~投球パフォーマンスの向上や投手の障害予防などへの貢献に期待~

【本学研究者情報】

大学院工学研究科 ファインメカニクス専攻
教授 山口 健
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 高速度カメラを用いて、野球において直球を投球する時のボールリリース過程(注1における指先とボールのすべり距離を推定する手法を開発しました。
  • 水で指先を濡らした場合に比べてロジン(注2などのすべり止めを使用した場合には、ボールリリースまでのすべり距離が1/2以下(平均でおよそ8 mm)ということがわかりました。
  • 摩擦力の低下によってすべり距離が増加すると、球速や回転数が低下し、ボールは狙った位置よりも上方に到達する傾向がみられました。また、特に回転数の低下に大きく影響することがわかりました。

【概要】

野球の投球において、ボールの種類や指先のすべり止めの違いによる「すべり」は重要な要素であり、これまでに活発に議論されてきました。しかし、これまでの議論は選手の主観的な感覚に基づくものであり、ボールをリリースする過程で本当にすべっているのか、本当ならどの程度すべっているのか、また、そのすべり距離の違いが投球パフォーマンスにどのような影響を与えるのかは、十分に解明されていませんでした。

東北大学大学院工学研究科の山口健教授、西駿明准教授、鈴木颯太大学院生(研究当時)、鈴木紳之介大学院生、ならびにNTT コミュニケーション科学基礎研究所の那須大毅主任研究員と福田岳洋客員研究員の研究グループは、高速度カメラを用いた解析により、ボールリリース過程における指先とボール間のすべり距離を推定する手法を開発しました。その結果、水で指先を濡らした場合に比べてロジン粉末などのすべり止めを使用した場合、ボールリリースまでのすべり距離が1/2以下(平均でおよそ8 mm)となることがわかりました。さらに、すべり距離が増加すると球速や回転数、コントロールが低下することが確認されました。特にすべり距離と回転数には強い負の相関が見られました。

本成果は、ピッチングにおけるボールリリースのメカニズムを解明し、投球パフォーマンスの向上、障害予防、用具の開発などに貢献すると期待されます。

本研究成果は、3月27日付で科学誌Scientific Reportsに掲載されました。

図1. ボールリリースまでのすべり距離と、摩擦条件、ボール回転数それぞれの関係
(a) 直球投球時における指先とボール間のすべり距離の摩擦条件による違いを示した箱ひげ図。グラフ中の白抜きプロットは各投手の5回の投球における平均値、黒塗りプロットは6名の投手の平均値を示す。(b) 指先とボール間のすべり距離とボール回転数の関係。グラフ中のプロットの色の違いは投手ごとのデータを表す。

【用語解説】

注1. ボールリリース過程
直球を投げる際、親指がボールから離れてから、人差し指と中指が離れてリリースされるまでの時間。

注2. ロジン
炭酸マグネシウム粉末と松脂(まつやに)の混合粉末。メジャーリーグベースボール(MLB)および日本野球機構(NPB)において投手のすべり止めとして使用が認められている。

【論文情報】

タイトル:Impact of slip distance between fingertips and ball on baseball pitching performance under different friction conditions
著者:Takeshi Yamaguchi*, Souta Suzuki, Shinnosuke Suzuki, Toshiaki Nishi, Takehiro Fukuda, Daiki Nasu
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 教授 山口健
掲載誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-025-93632-y

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
教授 山口 健
TEL: 022-795-6897
Email: takeshi.yamaguchi.c8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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