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高齢マウスで精子幹細胞の働きが変化 ―精子を作らない細胞が増え、動きながら精巣内に広がる―

【本学研究者情報】

〇大学院農学研究科 
准教授 原 健士朗
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【発表のポイント】

  • 高齢マウスの体内で、精子のもととなる「精子幹細胞」が、増殖?遊走しながら生存する様子を捉えることに成功しました。
  • 加齢により、一部の精子幹細胞が精子を作らなくなり、その子孫細胞が精巣内で勢力を拡大することが示唆されました。
  • この現象により、精子を作る精子幹細胞が本来利用すべき精巣内の空間が占有され、加齢に伴う精子数の減少につながる可能性があります。
  • 本成果は、加齢による精子減少の仕組み解明に貢献するものであり、高齢男性の不妊治療や、優良な種雄ウシの繁殖能力維持といった、医学?農学分野での応用が期待されます。

【概要】

近年、高齢出産の増加に伴い、男性では加齢による精子数の減少が課題となっています。精子のもととなる「精子幹細胞」は、増殖?遊走しながら精子を作る重要な細胞です。しかし、その働きが加齢とともにどのように変化するのかは不明でした。

東北大学大学院農学研究科の原健士朗准教授らの研究グループは、高齢マウスの精子幹細胞が、増殖?遊走しながら生存している一方で、一部が精子を作らなくなり、その子孫細胞が精巣内で勢力を拡大することを見出しました。この現象により、精子を作る幹細胞が利用すべき精巣内の空間が占領され、加齢時の精子数の減少につながる可能性が考えられます。

本研究成果は2025年2月22日に国際学術誌Aging Cellオンライン版に掲載されました。

図1. 精子幹細胞(GFRα1+細胞)にGFPの蛍光標識を入れた後、3-4か月の間に増殖と分化を繰り返して拡大したクローン領域の2例。左のタイプ1は精子まで分化する精子幹細胞クローン領域が拡大した様子、右のタイプ2は精子まで分化しない幹細胞クローン領域が拡大した様子を示します。それぞれの上段はクローン領域の全体像、下段はクローン領域の断面に核染色(Hoechst染色)を施した像を示します。精子細胞まで分化する精子幹細胞クローンでは精子細胞の存在領域(白い点線で囲った領域)までGFP陽性細胞(緑)が観察されたのに対し、精子まで分化しない精子幹細胞クローン領域では白い点線で囲った領域内にGFP陽性細胞が観察されませんでした。以上の結果より、加齢精巣には、精子を作る精子幹細胞の他に、精子を作らない精子幹細胞が存在し、そのクローンは勢力(存在領域)を拡大することが示されました。

【論文情報】

タイトル:虎扑电竞-Dependent Clonal Expansion of Non-Sperm-Forming Spermatogonial Stem Cells in Mouse Testes
著者: Terumichi Kawahara, Shinnosuke Suzuki, Toshinori Nakagawa, Yuki Kamo, Miki Kanouchi, Miyako Fujita, Maki Hattori, Atsuko Suzuki, Kentaro Tanemura, Shosei Yoshida, *Kenshiro Hara
*責任著者:東北大学大学院 農学研究科 准教授 原 健士朗
掲載誌:Aging Cell
DOI:10.1111/acel.70019.

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院農学研究科
動物生殖科学分野
准教授 原 健士朗(はら けんしろう)
TEL: 022-757-4306
Email: kenshiro.hara.b6*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学農学研究科
総務係
TEL:022-757-4003
Email: agr-syom*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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