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3Dプリンティングで炭素繊維強化プラスチックとチタン合金の接着剤不要な直接接合に成功 ─軽量化を進める航空機や自動車材料などへの適用拡大に期待─

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 ファインメカニクス専攻
准教授 白須 圭一
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 金属基板に炭素繊維強化プラスチック(CFRP(注1を直接3D造形し、熱融着による接合を実現。従来の接着剤による接合を上回る高い接着強度(27 MPa)を達成しました。
  • 3Dプリンタの印刷ベッドにホットプレートを組み込み、CFRP3D造形後に熱融着することで、3Dプリンタ上で接合と三次元構造物の造形を連続的に行えることを実証しました。
  • 材料を積層や付加してボトムアップで部材を作るアディティブマニュファクチャリング(AM(注2技術を活用した異種材料の直接接合の実用化に向け、さらなる進展が期待されます。

【概要】

航空宇宙産業や自動車産業を中心に、環境負荷の低減や生産効率の向上を目的としてアディティブマニュファクチャリング(AM)の活用が進んでいます。特に、構造部材の軽量化を実現しAMの付加価値を高めるには、3D積層造形技術を利用した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)と金属とのマルチマテリアル化3が重要な課題となります。

東北大学大学院工学研究科の白須圭一准教授らの研究グループは、従来必要とされていた接着層を要さず、3Dプリンタの印刷ベッドに搭載したホットプレートを活用することで、熱融着による金属基板とCFRPの強固な直接接合を実現しました。本技術により、接着剤を使用せずに強固な接合が可能となり、製造コストの削減や環境負荷の低減が期待されます。

本研究は、国立研究開発法人新エネルギー?産業技術総合開発機構(NEDO)の官民による若手研究者発掘支援事業「データ科学を活用したマルチマテリアル?アディティブマニュファクチャリング技術開発」の成果であり、2025年2月5日に専門誌Advanced Engineering Materialsに掲載されました。

図1. 実験結果の概要:(a) ホットプレートを組み込んだ3Dプリンタを用いたチタン合金基板上への短繊維CFRPの積層。(b) チタン合金基板上に融着?積層したフック形状構造物の耐荷重試験の様子。CFRP/チタン合金基板間のはく離は起こらず、フック部の根元で破断していることから、強固な接合が実現されていることが確認できる。(c) 短繊維CFRP(融着層)の上に積層した連続繊維CFRP。

【用語解説】

注1. 炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic: CFRP):強化材としての炭素繊維と、母材となる樹脂から構成される複合材料で、軽量でありながら高い剛性と強度を発揮する。母材樹脂の種類によって、熱硬化性CFRP(化学反応により一度硬化すると再加工ができず、優れた耐熱性や耐薬品性を有する)と、熱可塑性CFRP(加熱することで樹脂が軟化し再成形が可能なため、加工性に優れ、リサイクルや再利用がしやすい)に大別されるが、本研究では熱可塑性CFRPを3D造形した。

注2. アディティブマニュファクチャリング(AM):材料を切削などで除去して部材を製造する従来の方法に対し、材料を積層あるいは付加して製造する方法。3Dプリンタによる造形も含まれる。

注3. マルチマテリアル化:異なる機能や特性を有する材料を適材適所で組み合わることで、部材の高機能化、多機能化を図ること。

【論文情報】

タイトル:Multimaterial Bonding of Additively Manufactured Carbon Fiber-Reinforced Thermoplastics/64 Titanium
著者:Keiichi Shirasu*, Takeru Mizuno and Hironori Tohmyoh
*責任著者:東北大学大学院工学研究科ファインメカニクス専攻 准教授 白須圭一
掲載誌:Advanced Engineering Materials
DOI:10.1002/adem.202402221

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科ファインメカニクス専攻
准教授 白須 圭一 (しらす けいいち)
TEL: 022-795-4026 
Email: keiichi.shirasu.c1*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898 
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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