2024年 | プレスリリース?研究成果
ナノスケールで電気分極の反転を観察できる新しい顕微鏡手法を開発~消費電力100分の1以下の次世代メモリ?演算デバイス向け材料の開発へ~
【本学研究者情報】
〇電気通信研究所 准教授 平永良臣
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 強誘電体(注1)を用いた次世代超低消費電力デバイスの開発に不可欠なナノスケール物性計測技術を開発しました。
- この計測技術によって取得された計測データを機械学習で解析することによって、例えば、デバイスの信頼性を損なう要因を実空間で直接的に捉えることができるようになりました。
- 本計測技術によって、強誘電体の材料特性に関する微視的な理解がより深まり、材料特性の改善や新たなデバイスの創出に繋がることが期待されます。
【概要】
強誘電体を用いた次世代の超低消費電力メモリや演算デバイス(例えば消費電力が現状の100分の1以下のメモリや、現在発展途上の脳型コンピュータなど)の実現に大きな期待が寄せられています。これらデバイスの信頼性の向上にはナノスケールでの分極反転現象の深い理解が欠かせません。
東北大学電気通信研究所の平永良臣准教授および未来科学技術共同研究センターの長康雄特任教授らの研究グループは、東京工業大学物質理工学院材料系の舟窪浩教授らの研究グループとの共同研究を通じて、強誘電体の分極反転挙動をナノスケールの空間分解能で、かつ、従来法の300分の1の短時間で高精細な画像を観察可能な新たな顕微鏡手法を開発しました。これにより、例えば分極疲労現象(多数回の分極反転に伴い材料特性が劣化する現象)など、デバイスの信頼性確保を阻害するような現象に対する理解が進み、それらの知見に基づいた材料特性の改善が促されることが期待されます。
本成果は、2024年4月9日に学術誌ACS Applied Nano Materialsに掲載されました。

図1. 局所C-Vマッピング法の装置図
【用語解説】
注1.強誘電体 通常の誘電体(常誘電体)では、外部から電圧(電界)を印加したときのみ電気分極が現れるが、強誘電体では外部電界を印加しない状態でも分極(残留分極)を保持する。さらに、強誘電体では材料固有のある一定以上の電界を印加することによって分極を反転させることができ、これを利用したメモリデバイスや演算デバイスが提案(一部実用化)されている。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学電気通信研究所
准教授 平永 良臣
TEL: 022-217-5528
Email: hiranaga*riec.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学電気通信研究所 総務係
TEL: 022-217-5420
Email: riec-somu*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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