2019年 | プレスリリース?研究成果
「リンパ節転移」 治療は超音波とバブル
【発表のポイント】
- ヒトのリンパ節 (直径10 mm程度) と同等の大きさのリンパ節をもつマウスと悪性度の高い乳がん細胞株を用いて、リンパ節辺縁洞で腫瘍が増殖する初期乳がんリンパ節転移モデルを開発した。
- このマウスの転移リンパ節にリンパ管を介して抗がん剤とナノ?マイクロバブルを送達させ、超音波を照射すると、転移リンパ節辺縁洞の腫瘍組織に抗がん剤が効率的に導入され、強力な抗腫瘍効果を得ることができた。
- この手法は、従来の全身化学療法に比べはるかに少ない量の抗がん剤で、転移初期段階にあるリンパ節転移病巣を効率的に治療できる画期的な治療法であると考えられる。
【研究概要】
東北大学 大学院 医工学研究科 腫瘍医工学分野の小玉 哲也(こだま てつや)教授は、近畿大学 医学部 免疫学教室の加藤茂樹(かとう しげき)助教らとの共同研究により、リンパ節辺縁洞で増殖する初期乳がんリンパ節転移を効率的に治療する新しい治療法を開発しました。この方法では、超音波でナノ?マイクロバブルを破壊し、この破壊で生じる機械的な作用で細胞膜の透過性を一時的に亢進させ、抗がん剤などの外来分子を細胞内部に導入するソノポレーションを使用しています。
小玉教授らは、ヒトのリンパ節と同等の大きさを有するリンパ節腫脹マウスを使用し、リンパ節の辺縁洞(リンパ節の辺縁にある空隙)に悪性度の高い乳がん細胞が増殖する初期乳がんリンパ節転移モデルを開発しました。次に、このモデルにおいて抗がん剤とソノポレーションを併用し、がん細胞を効率的に縮小させることに成功しました。
リンパ洞には血流がないため, 従来の血行性の抗がん剤の投与(全身化学療法)ではリンパ節転移に対する効果は限定的と考えられます。本治療法は、全身化学療法に比べはるかに少ない量の抗がん剤で高い抗腫瘍効果をもたらすことが可能です。本手法により、従来の全身化学療法で問題となる後遺症や合併症、苦痛などの副作用が低減され、がん患者の QOL が飛躍的に改善されることが期待されます。
本研究成果は、2019年9月13日、国際科学誌Scientific Reports誌(電子版)に掲載されました (doi: 10.1038/s41598-019-49386-5)。本研究は文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われました。
問い合わせ先
東北大学大学院医工学研究科
腫瘍医工学分野
教授?小玉 哲也(こだま てつや)
電話番号:022-717-7583
E-mail: kodama*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)