2019年 | プレスリリース?研究成果
新しいナノチューブ登場:ベンゼンを連結 ?構造の自在設計と特質制御を可能とする周期孔ナノチューブpNTの化学合成?
【発表のポイント】
- 周期的に孔の空いたナノチューブ(周期孔ナノチューブpNT)を化学合成しました。
- 6角形の「ベンゼン」を繋ぎ合わせる「カップリング反応」を3種類活用することで、効率的な合成方法を確立しました。
- 長さ?太さが明確で一義的な筒状分子であり、工業的な化学合成も容易となると想定されることから、今後、材料科学分野などでの応用が期待されます。
【発表概要】
東京大学大学院理学系研究科の磯部寛之教授(JST ERATO磯部縮退π集積プロジェクト研究総括)の研究グループは、周期的に孔の空いたカーボンナノチューブ(周期孔ナノチューブpNT)の化学合成に成功しました。芳香族カップリング反応(注1)を、独自の工夫を凝らして活用することで、ベンゼンを40個、筒状に繋げることに成功したものです。今回の研究では、長さと太さが、ともにおおよそ2ナノメートルのナノチューブを誕生させました。長さや太さは、今後、自在に設計可能となると見込まれます。本研究グループは、周期孔ナノチューブpNTの筒のなかに、楕円球状分子C70フラーレンを複数取り込ませることにも成功しています。さらに、理論研究により、周期孔があることで、ナノチューブの電子的性質が大きく変わっていることを見いだしました。これまでのカーボンナノチューブは、長さや太さがふぞろいでしたが、周期孔ナノチューブpNTは長さ?太さといった分子構造が明確で一義的な「分子性物質(注2)」であることから、今後、炭素材料の応用研究に貢献するものと期待されます。
本研究成果は、国際学術雑誌「Science」に2019年1月11日に掲載されました。
【用語解説】
注1:芳香族カップリング反応
2つの分子を結合させる反応がカップリング反応と呼ばれる。特に、ベンゼンなどの芳香族分子同士を結合させる反応は、芳香族カップリング反応と称される。
注2:分子性物質
同一の構造を持つ単種の分子からなる物質が分子性物質(Molecular Entity)と呼ばれる。一方、異なる構造を持つ分子の混合物は化学種(Chemical Species)と呼ばれる。

図1.周期的に孔の空いたカーボンナノチューブ(周期孔ナノチューブpNT)の分子構造
(結晶構造を横から見た図)
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科物理学専攻
准教授 是常 隆(これつね たかし)
E-mail:koretsune*cmpt.phys.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
TEL.022-795-5572,6708 FAX.022-795-5831
E-mail:sci-koho*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)